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2017-09

ブーゲンビル島 - 2013.01.27 Sun

かつて、パプアニューギニアに赴任していたころ、内戦が終わった後のブーゲンビル島に足を運ぶ機会を得た。ブーゲンビル島といえば、先の大戦では山本五十六海軍大将が亡くなり、一説によると5万もの日本兵が亡くなったと言われる日本にも縁の深い場所だ。

数年前まではパプアニューギニア政府からの独立をめざした内戦がありぼろぼろになった島…現在は自治州となっているけれど、当時はまだ独立予備政府で、予備政府の機関がブカ島にあり、すぐ目の前には本島が見えた。海岸からあたりを見渡すと大小の島が点在して、流れは速く複雑だが表面が滑らかで穏やかな海はまるで小さな瀬戸内のよう。それも青く抜けるような空と海を持つ瀬戸内だ。それにしても美しい海、空、島々の緑、まるで楽園である。

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当時の島にはレンタカー会社がまだなく、そのためどこに行くのも徒歩にたよることになる。小さな町のため、そんなことはまったく苦にならず、それどころか町の表情がよく見えるためいつもの車の移動より土地に馴染むのも簡単なような気がした。

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仕事のために朝7時頃、対岸の本島にボートで渡る。移動の足は今は日本では生産されていない40系のランクルの新車、そして燃料はココナツを加工?してできた燃料だ。この辺りで走っている多くの車に“Powered by coconut”のステッカーが貼ってある。いかにもパワーがなさそうっていうか弱そうだけど、とてもエコな燃料という感じはする。ココナツ燃料はなにしろ、燃料スタンド自体が掘っ立て小屋でドラム缶+手動ポンプで給油するのでますます怪しい雰囲気だけれど匂いはとても美味しそうだ。

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片道約180kmの行程に中には内戦中にほとんどの橋が破壊されたため大小10本以上の川の横断が含まれているし、訪問した時期は雨期のため川は増水していた。いろんな意味でアドベンチャーである。はたしてこんないい匂いのする燃料の車でたどり着けるのだろうか。強い雨が降ればたちまち孤立して最悪当日中には帰れなくなるリスクを抱えながらの道中はとても美しく、そして変化に富んでいて楽しかった。深いところでは車輪がすっぽり埋まるくらいの川を渡り、落ちた橋を横目に眺めまさにアドベンチャー、テーマパークでもなんでもなく天然の冒険は、自分はやったことないけどラリー競技とかもこんな感じなのかなとわくわくした。

途中ジャンクションがありそこにはNo Go Zoneの看板とこの国にきてはじめてみるごっつい武装検問所があった。そこからは現独立予備政府と哲学を異にするメカムイ軍の制圧地域となっている。内戦の火種となった鉱山、そして山本大将が没した土地のアクセスロードもあちら側になる。過去の州都アラワはようやく人が帰り始めているとはいえ、まさに廃墟である。あちこち壁が落ち、屋根が落ちた無人の家や商店、人が住んでいる家でもガラスが割れたり抜けたりしているのは珍しくない。しかしよく計画された町であった面影はそこここにあり、すぐそばにせまる山や森の緑もあいまって美しい町であったことが偲ばれる。そんな中でも町自体の雰囲気は荒廃したそれではなく非常に穏やかであり、むしろ再建の熱気を内包しているようにみえる。これで活気があればいいのだがやはりそんな簡単にことは進まないということであろう。警察署長およびコミュニティリーダーの話では治安そのものはいいが、政治的な不安定さは現実としてあるということだった。

滞在していたロッジに程近い海の水路にゼロ戦が落っこちているという。ゼロ戦はいまだにその形をとどめており、スノーケリングで見ることが出来るということをロッジの若旦那との雑談中に聞いていた。滞在最終日、帰りの飛行機の時間にはまだ間があるのでその水路に行ってくれるボートを探しに町にでた。声をかけはじめて2人目であっけなくその存在を知る人にぶち当たり、さっそくボートをチャーターすることに決めた。水着をもっていなかったけれどそれは普通のパンツでいいし、水中を覗くためのゴーグルはチャーターしたボートの船頭が貸してくれた。

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海の上からでも想像以上に大きく、白い機体と広がる翼が確認できる。どきどきしていた。僕の知らない、でも自分の同胞による戦争の遺物が眼下に沈んでいると思うと不気味というのとはまた違う不思議な気持ちになった。

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ゴーグルをはめ海に潜るとゼロ戦は想像以上の美しさを保ちその威厳ある姿をとどめていた。水深3~5mの位置に沈んだそれは潮の侵食によるサビも、波の影響による破損も特にないようである。珊瑚もそんなに育っていない。残念ながらさかさまに落っこちているので機体ナンバーとかが確認できないそうである。迫力のある排気管が、今でも修理をすれば動かせるのではないかという錯覚を起こさせる。

この場所からほんの数mのところに胴体だけの戦闘機がさらにもう一機、ちょっと離れたもっと深い海に、これまた形の整った機体が一機沈んでいる。これほどの海が特に紹介もされずに手付かずで放置されていることに驚いた。商業主義に溺れてほしいわけではない。ゼロ戦が沈んでいるからといって日本人の観光客が押し寄せるとも思わないが、この時代まで生き残ったこれらの遺物は文化遺産みたいなものなのではないだろうかと思うのだ。このまま知る人ぞ知るで朽ちて行くのがいいのか、人工的に残していくのがいいのかどちらがいいのだろう。美しい海に潜った、それ以上の不思議な感覚があった。戦跡めぐりの趣味はないけどすごいものを見たなと素直に思った。


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● COMMENT ●

のんたんさんコメントありがとうございます。

私はパプアニューギニアで暮らして初めて、先の大戦を身近なものと感じるようになりました。日本の軍人と関わりのあった現地の方からは日本軍の悪い話も聞きましたけれど、それ以上に良い話も数多く聞きました。選択肢などないなか、戦いに行った人たちも本当は穏やかな暮らしをのぞんでいたという証拠だと思っています。お父様は戦地から無事帰ることが出来て本当によかったですね。ご苦労をされたことと思います。不安定な世の中ですが、平和であることを願っています。

美しい海に沈む零戦。青色に満ちた空間に沈む姿は、表現できない感情を呼ぶのでしょう。私の母の最初の夫はニューギニアで亡くなっています。母が亡くなった後、始めて知りました。ニューギニア戦線ですから、間違いなく病死か餓死でしょう。再婚相手だった父もハルマヘラ島から帰還。よく生きて帰ってこられたと思います。島へは「かもめの一発」(あだ名)という双発機で行ったそうです。護衛の零戦が2機一緒に飛んでいたのですが、それも途中まで。最後に翼を上下に振りながら戻って行ったそうです。そのとたん、双発機は海面すれすれに急降下!生きた心地がしなかったそうです。平和が一番ですが、原村も一番住み良さそうですね。

私の任地は癖のあるところが多いのでかっこいいといわれることはまずありません。
光栄です。

元カイロ在住の上司に引き続き、PNG在住経験のある方にもお会いしたのですか。
そうですね、PNGはオージーだらけで、英語の言い回しが独特で最初は苦労しました。
国連の事務所は同じエリアにあり、何名かダイビング仲間がいました。

着目されたステッカーは多分車両検査登録証で、フロントガラスの貴重な透明の部分です。
白地の一番上はPNGの国鳥極楽鳥の図案で、政府のシンボルです。

赴任しているところがカッコいいですね。
そう言えば、先日、あるオランダ人に会いました。
その方はUNに以前勤務していて、当時の赴任地は
パプア・ニューギニア。オーストラリア人がいっぱいの
環境で仕事をしていたそうです。
ところで・・・3枚目の写真。
左端下のオレンジのカード。真ん中の白いところは
左から右に字が書いてありますが、オレンジ色の枠の
ところは左から右、というか、裏からみた状態ですね。
最初なんかわからなかったんですが、フロント・ガラスにでも
貼りつけてあるのかな・・・なんて想像してます。
茂木先生の「アハ体験」の問題になりそう。


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